犬山高校のあゆみ      授業料のこと

犬山高校は犬山実科高等女学校時代、犬山高等女学校時代も含めて、義務教育ではないので、
授業料を徴収しています。
ところが意外に、いくらだったのか、記録に残っていません。
大正7年に1ヶ月50銭であったことはわかっています。
ただ、1ヶ月50銭がどれぐらいの価値なのか、現在と比較してもよくわかりません。
次に、記録が残っているのが、昭和初期。

昭和16年度の授業料納額通知書。1ヶ月ごとに犬山支金庫に払い込んでいたようです。
納入しないと、特別な注意もなく、滞納の手続きにはいるので、きちんと納入しなさいとある。
納入金額は、4円40銭。

これ(授業料)以外にも、別に支払うものもありました。

愛知県犬山高等女学校報国団の報国団費です。
1941(昭和16)年8月の「学校報国団ノ体制確立方」の訓令で
学校ごとに学校報国隊(団)を組織することとされました。
何をしたかというと、国の軍事的要請に従って労務に動員できる団(隊)であったのです。
そのために、わざわざお金まで払っているのですね。
こちらは1ヶ月80銭。

さて、昭和16年の4円40銭、昭和18年の80銭はどれくらいの価値のあるお金なのでしょうか。

   昭和15年   昭和16年   昭和17年   昭和18年 
 製造業(男・日給) 2.78 3.04 3.29 3.74
 清酒(2級酒・1.8リットル)  2.50 2.32 2.44 3.23
 たばこ(朝日20本) 0.20 0.25 0.25 0.70
 新聞購読料(1ヶ月) 1.23 1.23 1.23 1.27

単位は円です。だいたい製造関係の人が一日働くと、二級酒が一本買えるぐらい。
(清酒は高級品でした。)
昭和16年の授業料4円40銭は、日給よりやや高いぐらい。
今(2010年現在の愛知県立高校の全日制の授業料は9900円です)より、日給に対する割合は
やや高かったようです。
といっても、エンゲル係数は今より圧倒的に高く、それも考え合わせると、
今よりは授業料は高かったのではないかなぁ、と思います。

さて、戦後はどうなのでしょう。新制高校となってからの授業料は県下一律なので、
わかっています。どんな変遷をたどったのか、ちっょとみてみましょう。

グラフは愛知県立高等学校(全日制)の授業料と国公立大学の授業料の変遷をグラフにしたものです。
家計の中に占める割合をみるために、全国の消費支出も併せて載せました。
ただし、消費支出は月額で、授業料は年額です。
つまり、消費支出の線と授業料の線が重なれば、消費支出1ヶ月分で一年間学校に通えるわけです。

消費支出は生活費、家計費ともいわれ、主として実収入が当てられます。支出の目的や用途により、食料費、住居費、光熱費、被服費、教育費、教養娯楽費、交通 通信費、保健医療費等の費目に分けることができます。税金などを除いた、実際にお金を払う感覚のある支出です。

さて、グラフを見ると、昭和50年前半ぐらいまでの高校生、大学生は幸せだったなぁ、と思います。
消費支出の額は右肩上がりにあがっていきますが、授業料はほとんど変わりません。
実際、昭和35年に高校の授業料は月額650円になりますが、この額は実に昭和50年まで16年間変わりません。
その間、消費支出は3万1千円あまりから16万円あまりと五倍以上の伸びがあったにもかかわらずです。
昭和50年代の650円はほんの数時間働けば稼げた額です。ちょっと割のいいバイト(たとえば家庭教師なんか)
でもすれば、1時間でおつりがくる額です。(ですから、このころ授業料が払えないという生徒はほとんどいなかったはず)
昭和50年の理髪料金の平均は1220円ですから、一回髪を切る値段は授業料よりうんと高いのです。
以降、3年に一度ぐらいずつ、授業料はアップし、平成21年度には月額9,900円(年額118,800円)にまで上昇します。
9,900円もあれば、何回も髪を切りにいけますよね。

もっとひどいのは大学の授業料です。私立はもっと高額なのですが、
安い(と思っていた)はずの国立大学の授業料は昭和50年後半から急激に高くなり、
1ヶ月の消費支出分を遙かに超えるようになりました。
昭和46年度までは月額1,000円(年額12,000円)の時代が10年ほど続きました。
昭和46年度の消費支出は90,742円。国公立大学の授業料は1/90に過ぎません。
平成16年度の消費支出は308,438円。対して授業料は月額43,400円(年額520,800円)ですから
1/7にまで跳ね上がっています。
月額434,00円(平成22年度はさらにあがって、標準額44,650円です。)
アルバイトをして、自分で学費を稼ぐにはちょっと重たすぎる数字です。

平成22年度より、授業料の無償化が始まり、授業料を県立学校に納入する必要はなくなりました。
それまでは、銀行口座などでの振替で納入していました。

こんなのを入学式の日に提出していました。

でも、定時制は事務室へ直接持って行きました。
きちんと授業料を払い、学校へ来ているという気持ちを少しでも持ってもらうためだということです。

こんな袋に入れて、事務室に持って行きました。
平成22年、最後の授業料は全日制が月額9,900円、定時制が2,700円でした。